高齢者の健康維持におすすめな食材を教えてください。
高齢者の健康維持にご飯がおすすめです。
加齢に伴う身体の悩みを改善する効果があります。
高齢のご家族の食事で、次のような悩みを持たれている方はいませんか?
- おかず主体でご飯が少しの食事で問題ないのか
- ご飯をあまり食べてくれない家族にいい改善策はないか
高齢者がエネルギーを十分に確保し、筋肉量を減らさないためには、ご飯をしっかりと食べられる工夫が必要です。ご飯が進まず食が細くなると、身体はどんどん衰えてしまいます。
この記事では、「ご飯」が高齢者の健康づくりにおすすめな理由と、食べない方への実践しやすい対策を紹介します。ご飯が持つ健康効果を知れば、日々の食事でご家族の健康をしっかりサポートできるようになるでしょう。心身をより元気に保っていくためにぜひ参考にしてください。
高齢者の健康づくりに「ご飯」がおすすめな理由
高齢者の健康を維持していくためには、ご飯を食べるのがおすすめです。なぜならお米には多くの高齢者が抱える身体的な悩みを改善する効果があるからです。
加齢に伴う身体の悩みとして次のものが挙げられます。
- 筋肉の減少
- 便秘
- 脱水
- 睡眠の質の低下
これらの悩みに対して、ご飯を食べることでどのような改善効果が期待できるのか、順番に解説します。
ご飯のたんぱく質が「筋肉量の維持」に有効
ご飯に含まれるたんぱく質が、高齢者の筋肉量の維持に役立ちます。
炭水化物のイメージが強いご飯ですが、ご飯1膳(150g)に対して卵1/2個分のたんぱく質が含まれています。主食であるご飯は回数を多くとれるため、安定的なたんぱく源となれるのです。
また、ご飯からしっかりエネルギーを確保することで、肉や魚から摂取したたんぱく質が筋肉などの体の材料として使われやすくなります。
ご飯とおかずの両方からバランスよくたんぱく質を摂取することがおすすめです。
粒食であるご飯は噛むのに適した食材です。よくそしゃくすれば、口から一本の管でつながっている胃腸の動きが活性化されます。しっかり噛むことが筋肉でできている胃腸の筋トレにもなります。
ご飯のでんぷんが「腸内環境」を改善
ご飯は腸内環境の改善に有効な食材です。ご飯のでんぷんが消化される過程でさまざまな整腸作用をもたらしてくれます。
特に注目したいのが、消化されにくいでんぷんです。でんぷんの一部は小腸で消化されずに大腸まで届きます。難消化性のオリゴ糖やレジスタントスターチと呼ばれるものです。
難消化性のオリゴ糖やレジスタントスターチは食物繊維と同じ働きをします。
- 善玉菌のエサとなり腸内の善玉菌を増やす「水溶性食物繊維」
- 便のかさを増してお通じを良くする「不溶性食物繊維」
ご飯に含まれるでんぷんは水溶性と不溶性の両方の性質を持つので、便秘解消に効果的です。ご飯は腸内環境の改善にとても有効だといえるでしょう。
ご飯は味噌汁と一緒に食べるのがおすすめです。味噌の整腸作用が加わると腸の改善効果が更に高まります。
ご飯の高い水分量が「脱水」を予防
ご飯は高齢者の脱水予防に効果があります。ご飯は60%が水分のため、食事から効率的に水分の摂取が可能です。喉の渇きを感じづらくなる高齢者にとって、食事からの水分摂取が脱水の予防につながります。
また、ご飯が消化された後、体内に余ったブドウ糖がグリコーゲンという形で筋肉や肝臓に蓄えられます。貯蔵される際に3倍の水分子と結合することから、ご飯をしっかり食べると体内の水分量がアップするのです。ご飯を定期的に食べれば、脱水状態を防げます。
ご飯の成分が「睡眠ホルモン」を活性化
ご飯を食べると睡眠の改善が期待できます。ご飯に含まれる必須アミノ酸「トリプトファン」が睡眠ホルモンの生成に関係しているからです。
特に朝食でご飯を食べると、夜の睡眠を改善します。トリプトファンから睡眠ホルモンが生成されるまでに14~16時間かかるからです。睡眠の質を高めたいのであれば、朝食にご飯を食べるのが良いでしょう。
トリプトファンを摂ることは精神の安定にもつながります。トリプトファンを材料とするホルモン「セロトニン」が不足すると、意欲低下や気分の落ち込みなどうつ状態になるリスクが高まります。トリプトファンを食事からしっかり摂取することが、意欲の増進につながります。
高齢者が「ご飯を食べない」時に試して欲しい対策5選
ご家族のご飯を食べる量が少ない、または、ご飯を食べない時の対策について、具体的に5つ紹介します。
- おかずの量を減らす
- 酸味のあるものを取り入れる
- スープ状にして食べやすくする
- 間食におにぎりを取り入れる
- 雑穀を混ぜて栄養価をアップする
食べられない原因に合った対策をとることで、ご飯を少しずつ食べられるようになるでしょう。
おかずの量を減らす
おかずでお腹がいっぱいになりご飯が入らない場合は、おかずの量を減らしましょう。
65歳以上の方が生活習慣病などの病気にかかりにくくなるためには、以下の割合で栄養を摂ることが望ましいと言われています。
- 炭水化物50~65%
- たんぱく質15~20%
- 脂質20~30%
(参考:厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2020年版)』P.170「エネルギー産生栄養素バランス」)
ご飯などの主食を6割・おかずを4割にするとバランスよく栄養をとれます。消化の負担が低いご飯を増やせば胃腸への負荷が減り、消化がスムーズになります。また、おかずを減らせば、余分な塩分や脂質を控えられるでしょう。
酸味のあるものを取り入れる
ご飯が進まない場合は、酸味のあるものを取り入れるのがおすすめです。酸味が味覚や嗅覚を刺激し、唾液の分泌を促し食欲を増進させます。
- ご飯に梅干しを添える
- 酢飯にする
- おかずに酢の物や柑橘のものを取り入れる
食事に酸味を加えるとさっぱりとして食べやすくなります。また、食事の始めの方に酸っぱいものを食べると、胃酸の分泌が促進されて消化力もアップします。
酸味が強すぎるとむせやすくなるので、食べやすい酸味の度合いに調整しましょう。
スープ状にして食べやすくする
固形物をとることが難しい場合は、おかゆや雑炊などスープと一緒に食べられるようにするとよいでしょう。飲み込みづらい、またはむせやすい方は片栗粉などでとろみをつけると飲み込みやすくなります。和・洋・中と味のバリエーションを変えると食事が単調になるのを防げます。調理例として以下のものを参考にしてください。
- 卵がゆ
- 中華がゆ
- トマトリゾット
農林水産省の食育のページに、高齢者も食べやすいスープご飯のレシピが公開されていますので、ぜひ試してみてください。「肉団子の胡麻坦々風スープごはん」
間食におにぎりを取り入れる
決まった食事時間に食べられない場合は、間食におにぎりがおすすめです。具材や味付けを工夫すると飽きずに食べられ、エネルギーをしっかり摂取できます。
おにぎりのアレンジ例をいくつかご紹介します。
- 具材に鮭やツナなどたんぱく質を補うものを加える
- 味噌を付けて焼きおにぎりにする
- 韓国風にご飯にごま油を混ぜる
- 酢飯でお稲荷さんにする
- 噛みきりにくい海苔の代用に、薄焼き卵やとろろ昆布を使う
小さなおにぎりを用意しておくと、食事の合間に気軽に食べられるでしょう。
雑穀を混ぜて栄養価をアップする
ご飯をほんの少量しか食べられない場合、摂取できる栄養が不足しがちです。雑穀を混ぜて炊くと効率的に栄養価をアップできます。雑穀はビタミン・ミネラル・食物繊維が豊富です。噛む力や胃腸力が弱い方は小粒で消化しやすい雑穀がおすすめです。
高齢者におすすめの雑穀を以下に挙げます。
- あわ
- ひえ
- きび
非常に粒が小さいので離乳食にも使われ、噛む力が弱い方も負担なく食べられます。雑穀を活用して不足しがちな栄養を補いましょう。
まとめ
高齢者の健康維持にご飯がおすすめな理由と食べない方への対策について解説しました。
日本人にとって一番身近な主食であるご飯は、健康の土台づくりにとても有効です。
ご飯を軸にして日々の食事を考えると、家族の健康管理がしやすくなるでしょう。ぜひ毎日の食事にご飯を積極的に取り入れてみてください。