認知症を予防するための食事について教えてください。
認知症の予防には、食事の内容と食べ方を見直す必要があります。認知症を予防する食事を毎日の習慣にすることが大切です。
日本人の高齢化が進む中、認知症の患者数が増加しています。高齢になったご家族が認知症にならないか不安を抱いている方もいらっしゃるでしょう。
認知症は現代の医療では完治が難しい病気です。しかし、食習慣を見直せば、認知症の予防効果が期待できます。
この記事では、認知症を予防する食事について詳しく解説します。脳を元気に保つ食習慣を身につければ、毎日無理なく実践できるでしょう。ご家族の認知症の予防対策としてぜひ参考にしてください。
認知症予防に「食事」が重要な理由
認知症の予防には食事の見直しがとても重要です。脳の機能維持には栄養の摂取が不可欠であり、食事の内容や食べ方が脳の老化や認知症の発症に大きな影響を与えるからです。
脳は体重の約2%の重量ですが、体全体のエネルギーの約20%を消費しています。脳を正常に働かせるためには定期的なエネルギー供給が必要なのです。
また、糖尿病や肥満などの生活習慣病が認知症のリスクを高めると言われています。生活習慣病の予防・改善にも日々の食事の管理が欠かせません。
毎日の食生活の見直しが生活習慣病を始めとする認知症のリスクを減らし、健全な脳機能の維持につながります。
認知症予防に効果的な「食事の習慣」5選
認知症予防の食事は、毎日の習慣にすることが大切です。一時的に予防のための食事を実践しても、継続しなければ効果は得られません。
ここからは、認知症予防に効果的な食習慣について5つ解説します。続けやすい工夫も合わせて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
- 「バランスよく食べること」が認知症対策に効果的
- 「糖質を適切に摂ること」が認知症のリスクを軽減
- 「よく噛むこと」が脳の血流をアップ
- 「善玉菌を増やす食品を食べること」が脳に好影響
- 「自分で調理すること」が脳を活性化
「バランスよく食べること」が認知症対策に効果的
認知症を予防するために、バランスよく食べることが大切です。必要な栄養素を満遍なく摂取すると、脳を始めとする体の機能維持につながります。
バランスの良い食事は、必ずしも品数を多くする必要はありません。ご飯に具沢山の味噌汁とたんぱく質のおかずを一品添えるだけで、栄養バランスのとれた食事になります。主食とおかずの割合を6対4にすると、食事のバランスを整えられます。
また、食材選びに「まごわやさしい」を取り入れてみましょう。「まごわやさしい」とは、積極的に摂取したい食材の頭文字を並べた言葉です。
- 「ま」:まめ(豆類・大豆食品)
- 「ご」:ごま(ごまやナッツ類)
- 「わ」:わかめ(海藻類)
- 「や」:やさい(野菜)
- 「さ」:さかな(魚介類)
- 「し」:しいたけ(きのこ類)
- 「い」:いも(いも類)
主食とおかずの割合や食材選びを意識すると、バランスのとれた食事ができ、脳機能の維持にもつながります。
摂取した栄養をしっかり消化吸収するには、ビタミン・ミネラル・食物繊維の助けが必要です。効率よく摂るには、野菜やきのこをたくさん入れた味噌汁などの野菜スープがおすすめです。汁ごと食べれば水溶性の栄養素も無駄なく摂取できます。
「糖質を適切に摂ること」が認知症のリスクを軽減
糖質を適切に摂取することが認知症のリスク軽減につながります。糖質が多すぎると生活習慣病のリスクを高め、少なすぎると脳に栄養が回らないからです。
適切な糖質の摂取を意識できれば、健全な脳機能の維持が期待できるでしょう。
糖質の適切な摂り方について紹介します。
- 夕食に糖質を制限しすぎない
- 主食のごはんはしっかりと摂る
- 砂糖を使った甘いものは控える
脳はエネルギー源に多くのブドウ糖を必要とするため、定期的なエネルギーの供給が欠かせません。寝ている間もエネルギーを消費しているため、夕食時に糖質を制限しすぎないようにしましょう。エネルギーが不足すると、筋肉が分解されて筋肉量の減少にもつながります。
また、糖質の摂取で大切なことは血糖値を安定させることです。ご飯などのでんぷんは血糖値を緩やかに上げますが、砂糖などの甘いものは短時間で血糖値が上がります。
特に「果糖ブドウ糖液糖」などの「異性化糖」は血糖値を急上昇させます。飲料や調味料など多くの加工食品に使われているので、過剰に摂取しないよう注意が必要です。
誤った糖質の摂取は血管の状態を悪化させ、生活習慣病の原因となります。特に血流量が多い脳に与えるダメージは大きいです。必要なエネルギーの確保と体に負担をかけない糖質の摂り方が、認知症のリスク軽減につながります。
朝食に食物繊維の多い食品を食べるのもおすすめです。昼以降の血糖値の急上昇を防ぎ、一日の血糖値を安定的に保ってくれます。
「よく噛むこと」が脳の血流をアップ
よく噛むことが脳の血流量を増やします。そしゃく運動が顔や頭部の血管を刺激し、血流を促進するからです。脳への血流が増加すると、酸素や栄養が脳に十分に供給され、脳の働きが活発になります。
よく噛むためには、歯の数を保つことが大切です。歯の本数が少ない人ほど、脳の容積が小さくなり、アルツハイマー型認知症の発症リスクが高まると言われています。よく噛むために、そして脳の萎縮を防ぐためにも、口腔ケアの習慣化も不可欠です。
毎日の食事をしっかり噛んで味わい、元気な脳を維持しましょう。
早食いになってしまう方は、一口の量を少なめにして、始めの一口を意識して噛んでみましょう。食事の始めに意識すると徐々に噛む回数を増やせます。噛んでいる間は箸を置くと早食いを防げます。
「善玉菌を増やす食品を食べること」が脳に好影響
腸内の善玉菌を増やすと脳に良い影響を与えます。脳と腸は密接に関係し合っているからです。腸は「第2の脳」とも呼ばれ、腸の状態が脳に与える影響はとても大きいのです。したがって、腸内環境を良好に保てば脳の健康にもつながります。
腸内環境を改善するための方法を3つ紹介します。
- 腸内の善玉菌を増やす
- 動物性たんぱく質や脂質を摂りすぎない
- 早食いやそしゃく不足に注意する
腸内に住む善玉菌を増やすために、善玉菌のエサとなる食物繊維を積極的に摂りましょう。お米などの穀物由来の食物繊維は、老廃物を排出するデトックス力が高いのでおすすめです。
味噌や納豆、ぬか漬けなどの発酵食品を取り入れるのもよいでしょう。
また、動物性たんぱく質や脂質の摂りすぎは腸内環境を悪化させます。吸収しきれずに大腸に到達したものが悪玉菌のエサになるからです。
未消化物も腸内を荒らす要因になるため、早食いをせずによく噛んで食べましょう。
「自分で調理すること」が脳を活性化
自分で調理することは認知症の予防に効果的です。調理には複数の工程があり、多くの情報を処理する作業が脳を活性化してくれるからです。
- メニューは何にするか
- 材料をどのように切るか
- 下処理は必要か
- 煮たり焼いたり調理方法をどうするか
- 火加減はどれくらいが適正か
- 盛りつけにはどのような食器が適しているか
多くの状況判断が脳のトレーニングになり、思考しながら手を動かし立って作業することで脳の働きが活発になります。
また、味や見た目、香りなど五感への多くの刺激が脳を活性化します。
一人での調理が難しい場合は、ご家族と分担して一緒に料理を楽しむのもよいでしょう。料理が行えない時は、献立を一緒に考えるのも脳のトレーニングになります。
まとめ
認知症予防に食事が重要な理由と、予防するための食習慣について解説しました。
脳に良いとされる食品を偏って摂るのではなく、体全体を整えるバランスのよい食事をとることが重要です。
また、食事は「何を食べるか」だけでなく「どう食べるか」が大切です。1日3食をよく噛んで食べ、必要なエネルギーを定期的に供給することが脳機能の維持につながります。
ご家族が認知症の不安なく元気に年を重ねられるように、食事の習慣をぜひ見直してみてください。