老人ホームの食事について確認するポイントを教えてください。
提供される食事形態や食事の環境、施設の食へのこだわりを確認するといいでしょう。可能であれば、試食することをおすすめします。
老人ホームへの入居を検討される際、食事について気になる方も多いのではないでしょうか? 老人ホームの食事が合わないと、施設での生活の満足度が大きく下がってしまいます。
この記事では老人ホームの食事について、確認すべきポイントを3つ具体的にご紹介します。ご自身に合った食生活を送るために、さまざまな視点から食事について確認することが大切です。
入居後も安心して食事が楽しめるよう、ぜひ参考にしてください。
老人ホームで体の状態により「食事形態」を選択できるか
老人ホームによって提供される食事形態が違うので、入居前の確認は重要です。現在は通常の食事がとれていても、この先食べられるものが変わっていくこともあるからです。
老人ホームの食事形態は大きく3つ挙げられます。
- 普通食
- 介護食
- 治療食
順番に解説します。
健康な方向けの「普通食」
普通食とは、通常の調理方法で作られた食事のことです。食事制限がなく、一般的な食材の大きさ・固さで問題なく食べられる方に提供されます。
食べる力が低下している方向けの「介護食 」
介護食とは、食べる能力に合わせて調理・加工がされた食事のことです。「噛む」「飲み込む」「消化吸収する」機能のいずれかが低下した方に向けて、食べやすいように工夫されています。
代表的な介護食について、以下にまとめました。
介護食の種類 | 食事の形状 |
軟菜(なんさい)食 | 見た目は普通食と同じで、食材を歯ぐきや舌で押しつぶせるくらいにやわらかく調理した食事 |
きざみ食 | 食材を噛みきりやすく細かく刻んだ食事 |
ソフト食 | 食材をペースト状にし、ゼラチンなどで固め元の形状を再現した食事 |
ミキサー食・とろみ食 | ミキサーでポタージュ状にし、とろみを加えて飲み込みやすくした食事 |
ゼリー食 | ミキサー食をゼラチンや寒天などでゼリー状に固め、喉の滑りをよくし、むせにくくした食事 |
施設によって、介護食の種類や呼び方が異なります。対応できる介護食の内容も違うので、個人の状態にどこまで対応してもらえるのか確認が必要です。
持病により食事制限がある方向けの「治療食」
治療食とは、持病や体調に合わせて提供される食事のことです。 具体的には、以下のようなものがあります。
- 減塩食
- 糖尿病食
- 腎臓病食
- アレルギー食
介護食や治療食についても、普通食と同じようにおいしく食事を楽しめるよう、見た目や味付けを工夫している施設も多いです。
老人ホームの見学時に「試食」ができるか
老人ホームの食事に対するさまざまな疑問は、実際に食べてみることで解消できます。味付けや食事の環境などは、ホームページやパンフレットの情報だけで判断するのは難しいでしょう。
試食時の確認ポイントを3つご紹介します。
- 食事の味付けや食べやすさをチェックする
- 月間の献立表を見せてもらう
- 実際の食事の様子を観察する
それぞれ具体的に説明します。
食事の味付けや食べやすさをチェックする
試食するときは、食事の味付けや食べやすさをチェックしましょう。味付けや食べやすさは、実際に食べてみないとわかりません。
食べやすさについては、以下の点を確認しましょう。
- 食べやすい大きさになっているか
- 食材のやわらかさは適しているか
- 食事の提供温度は適切か
- 食欲をうながす盛り付けがされているか
- 食べやすい食器が使われているか
最近は食の重要性をより認識して、料理の味にこだわる老人ホームが増えています。食事を実際に味わって、味付けが好みに合うか確認しましょう。
月間の献立表を見せてもらう
試食するときに、献立表を確認させてもらいましょう。食事内容に大きなばらつきがあったり、同じようなメニューが繰り返されたりしていては、安心して毎日の食事を楽しめません。
月間を通して献立を見ることで、次のことが確認できます。
- メニューにかたよりがなく、バラエティーに富んでいるか
- 季節感や旬を感じられる食事内容になっているか
もし可能であれば過去の献立表など、違う季節のものを見せてもらうのもよいでしょう。
最近はカタカナの料理名など、メニュー名を見ただけでは実際の料理が分からないものもあります。安心して食べてもらえるよう、献立に説明書きや実際の写真を載せている施設もあります。
実際の食事の様子を観察する
試食時に、実際の食事の様子や環境を観察してみましょう。落ち着かない環境では、安心して食べられないからです。
見学するときは、以下の項目についてチェックしましょう。
- 食事をとる場所は明るく清潔であるか
- 穏やかな雰囲気で食事がされているか
- 入居者やスタッフのコミュニケーションがとれているか
- スタッフは食事の介助に慣れているか
実際の食事の様子を見ることで、入居してから自分がどのように食事をするのか想像できるでしょう。
試食に対応していない施設もあるので、事前確認は必須です。
見学する際は、入居者の生活の場にお邪魔していることを忘れずに、まわりへの心配りをもって行動しましょう。
老人ホームが食事に「こだわり」を持っているか
老人ホームでは食事の満足度を上げるために、さまざまな工夫がされています。施設の食へのこだわりについてもぜひ確認しておきましょう。ご自身の要望に合った老人ホーム選びに役立てられます。
老人ホームのこだわりが見られるポイントは以下の3つです。
- 調理している場所
- 朝食の内容
- 施設独自の食を楽しめる工夫
順番に説明します。
調理している場所
食事を施設内の厨房で調理しているか、外部に委託しているかで、提供される食事内容も違ってきます。
施設内調理と外部委託のメリット・デメリットについて簡単にまとめました。
施設内調理 | 外部委託 | |
メリット | 入居者に寄り添ったメニュー作りや対応が可能 | 出来立ての料理を食べられる委託することでコストが抑えられる |
デメリット | 人件費や手間がかかるためコストが高め | 味や見た目が手作りには劣る |
それぞれの特徴を理解し、ご自身が求める食事に近いか確認しましょう。
外部委託で使用される配食サービスのクオリティも年々高まっています。希望の施設が配食サービスを利用している場合は、食事の内容をチェックしておきましょう。
朝食の内容
一日の食事の中で、準備の時間と人員の確保が一番難しいのが朝食です。簡素なメニューになってしまうことも少なくありません。
制約がある中で、施設側がどのような対応や工夫をしているのか確認しましょう。朝食の扱いから、施設の食事への姿勢をうかがえます。
実際に朝食の場を見学するのは難しいので、献立表を見たり、施設のスタッフに話を聞いたりして確認してみましょう。
施設独自の食を楽しめる工夫
老人ホームでは、入居者が楽しんで食事ができるよう工夫されています。老人ホームによって取り入れている内容はさまざまです。
提供されている食事例として、次のようなものがあります。
- イベント食
- セレクト食
- 食の催しもの
それぞれ順に説明します。
イベント食
年間を通して四季折々の行事を楽しめる食事です。施設内にいて季節感を味わえます。
イベント食のメニューの一例です。
1月 | お正月のおせち料理 | 7月 | 土用の丑のうなぎ |
2月 | 節分の恵方巻 | 8月 | 夏祭りの屋台ごはん |
3月 | ひなまつりのちらし寿司 | 9月 | 敬老の日の祝い御膳 |
4月 | お花見弁当 | 10月 | ハロウィンのかぼちゃ料理 |
5月 | 端午の節句のちまき | 11月 | 秋の食材の行楽弁当 |
6月 | 水無月の和菓子 | 12月 | クリスマス料理 |
セレクト食
選択食とも呼ばれ、複数のメニューから食べたいものを選べる食事スタイルです。例えば「ごはん・パン・麺類」「肉・魚」「和食・洋食・中華」などの選択肢から食べたいものを選べるので人気があります。
食事の自由度が上がる一方で、食費は高くなりがちです。
食の催しもの
施設によって入居者が食事の場を楽しめるように、さまざまな趣向をこらした催しやレクリエーションが行われています。
一部の老人ホームで実際に催されているものを紹介します。
- お寿司のバイキング
- そば打ち体験
- マグロの解体ショー
- 居酒屋を模したレクリエーション
まとめ
老人ホームの食事について、確認すべき3つのポイントを解説しました。
- 体の状態に合った食事形態を選べるか
- 見学時に試食ができるか
- 食事にこだわりを持っているか
昨今は食の安心・安全だけではなく、入居者にいかに食事の時間を楽しんでもらうかに力を入れている老人ホームが増えています。健康な高齢者はもちろん、食べることに自信が持てない方も、安心して食に向き合える施設がたくさんあります。
入居後に快適な食生活を送るためにも、事前の確認をしっかりと行い、ご自身に合った老人ホームを見つけましょう。