

介護中の母の口腔ケアがうまくできず困っています。



在宅介護での口腔ケアのやり方を解説します。口腔ケアはとても重要なケアなので、ぜひ参考にしてください!
介護中にお口の中の汚れや口臭が気になったことはありませんか?
お口の中の汚れを放置すると、歯を失うばかりか誤嚥性肺炎になる可能性もあります。
ですが口腔ケアの必要性や手順がわからず、家族ではケアしきれていないケースが多いのも事実です。
私が歯科医院で勤務していた際にも「認知症の母の口腔ケアがうまくできません」とお悩みを相談される方がいらっしゃいました。
この記事では、在宅介護で口腔ケアが大切な理由と手順を解説します。
お口の中をきれいに保つことは、むし歯や誤嚥性肺炎の予防だけでなく、生活の質の向上にもつながります。
口腔ケアの重要性を知って、在宅介護での口腔ケアが不安なく実施できるようになっていただければ幸いです。
在宅介護で口腔ケアが大切な理由


在宅介護では、口腔ケアがお口の健康だけでなく全身の健康を維持する重要な役割を果たします。
継続的に口腔ケアをおこなうと以下の効果が期待できます。
- 口腔内のトラブルや病気の予防
- 口腔機能の維持や回復
順番に解説していきます。
口腔内のトラブルや病気の予防
毎日の口腔ケアはむし歯や歯周病を予防し、口の中を清潔に保つことで口臭や口内炎など口腔内トラブルを軽減します。
口腔内の細菌を減らすことは、誤嚥性肺炎など病気の予防にも効果的です。
口腔ケアで予防が期待できるとされる病気の一例は以下の通りです。
- 糖尿病
- 心疾患
- 骨粗しょう症
参考:「口腔の健康状態と全身的な健康状態との関連について」(出典:厚生労働省「e-ヘルスネット」)
適切な口腔ケアは、全身の健康維持にもつながる重要な役割があります。口腔ケアでお口のトラブルやさまざまな病気の予防につなげましょう。
口腔機能の維持や回復
口腔機能を維持・向上すれば、より会話や食事を楽しめるようになります。
口腔ケアでだ液の分泌が増加し味覚改善した結果、食欲も増して栄養状態の改善につながります。
口腔ケアに期待できる効果は以下の通りです。
- 家族みんなで毎日の食卓を囲みながら楽しく食事ができる
- 噛むことで脳が活性化され、認知症予防にもつながる
- 口や舌が動かしやすくなり、会話を楽しめるようになる
- 円滑なコミュニケーションがとれ、人とのつながりが保ちやすくなる
口腔ケアでお口の健康を守ることは日々の生活の質を高めます。これからも「話す」「食べる」といった喜びを持ち続けることにつながります。
在宅介護で役立つ口腔ケア用品


【用途】 | 【アイテム】 |
歯の清掃 | 歯ブラシ・タフトブラシ 歯間ブラシ・デンタルフロス |
舌や粘膜の清掃 | 舌用ブラシ・スポンジブラシ 口腔用ウェットティッシュ |
入れ歯のお手入れ | 入れ歯用ブラシ(義歯ブラシ)・入れ歯洗浄剤 |
うがい・保湿 | 洗口液・保湿剤 |
補助用品 | うがい受け(ガーグルベースン) 使い捨て手袋 |
口腔ケアをおこなう5つの手順


口腔ケアをはじめる前にお口の中を観察し、歯や歯ぐきから出血や口内炎ができていないか確認しましょう。
入れ歯を使用している場合は入れ歯をはずし、なくさないように入れ歯ケースに保管しておきます。
ここでは、一般的な口腔ケアの手順とポイントを解説します。
口腔ケアはできるだけ短時間で、スムーズにおこなうことがポイントです。
口腔内に異常が見つかった場合は、歯科医師や歯科衛生士に相談し適切な処置を受けてください。
うがい
まずはうがいをしてもらいましょう。うがいで口の中の食べ物カスなどを洗い出します。ガーグルベースンを使えば、洗面所まで移動するのが大変な方でもその場でうがいができて便利です。
認知症でうがいの水を飲み込んでしまう方や、寝たきりで上半身が起こせない方はうがいが困難です。無理にうがいをおこなわず、口腔用ウェットティッシュなどで汚れを取り除きましょう。
歯の清掃
歯ブラシやタフトブラシで歯の表面を清掃します。
歯の間の汚れは、歯間ブラシやデンタルフロスで取り除きます。
強い力で磨くと出血する場合があるので、優しくていねいに磨きましょう。
舌や粘膜の清掃
スポンジブラシや口腔用ウェットティッシュで、口腔内粘膜の汚れを拭き取ります。
舌にこびりついた白い苔状の汚れは舌苔(ぜったい)といい、口臭の原因となります。
舌の表面は柔らかく傷つきやすいため、舌用ブラシで奥から手前にやさしく汚れをこすりとりましょう。
入れ歯の洗浄
入れ歯を水ですすぎ、義歯ブラシでブラッシングします。義歯ブラシを使用することで、入れ歯を傷つけることなく、入れ歯の頑固な汚れを磨き落とせます。
時間があるときは、入れ歯洗浄剤につけて洗浄をおこないましょう。
洗浄剤は「部分入れ歯用」「総入れ歯用」と、入れ歯にあった洗浄剤を必ず使用してください。
うがい・保湿
仕上げうがいには洗口液の使用もおすすめです。
保湿剤を手指やスポンジブラシにとり、乾燥した唇や口腔内の粘膜全体にやさしくマッサージするように塗布し、保湿をおこないます。
まとめ
在宅介護で口腔ケアが大切な理由と、口腔ケアの手順について解説しました。
継続的な口腔ケアはむし歯や歯周病の予防だけでなく、口腔機能の維持や回復を促し全身の健康を支える重要な役割を果たします。
ご家族だけでケアしきれない場合は、歯科衛生士などの専門家に相談や介護保険を活用した訪問歯科診療の利用も選択肢のひとつです。
「食べる楽しみ」や「会話の喜び」を守りながら、より良い介護生活を送るために今日から在宅での口腔ケアを取り入れてみてください。